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今日はついにお兄ちゃん…はたけカカシが任務から帰ってくる日。そりゃぁお兄ちゃんが毎回無事に帰ってきてくれるのは、すごくすごく嬉しいよ。この広いおうちに一人でいるのは、やっぱり淋しいもん。それに例え血は繋がっていなくても、彼は私の強くてカッコよくて優しくて、大好きなたった一人のお兄ちゃんだもん。

だけどね、お兄ちゃん。会うたびに私の大っっっ好きなシカマルと喧嘩するのだけは、もうやめてっ!

ヒヤシンス 【勝負】


「なぁ…もしかして今日?ナルト達の班が帰ってくんの…」

ベッドの上で雑誌を読みながらうとうとしていた私に、ちらっとカレンダーでも見たのか、ベッド脇で将棋の本を読んでいたシカマルは少し青ざめながら声をかけてきた。

「そだよー、昨日パックンが伝えに来てくれた!」

パックンはお兄ちゃんに拾われてからのこの十三年間、私が一番同情する相手。だってもう本当にこっちが可哀想になるくらい、私とお兄ちゃんの間を毎日行ったり来たりしてくれている。この十三年間、お兄ちゃんが任務で家(決して「里」ではない。「家」である)を出るたびにずっと…。
私が幼い頃は、お兄ちゃんが家を出るたびに幼馴染みで、今は彼氏でもあるシカマルの家にお世話になっていたけど、アカデミーに入学してからはお兄ちゃんがお迎えに来なくてもいいように、と一人で留守番するようになった。
でも私ももう十六歳になる立派な中忍。パックンも可哀想だしもうやめてって言ったら

「なにいってるの。の無事がわからないとお兄ちゃん心配デショ!」

なんて言いながらぎゅっと抱きしめられてしまった。


そう、私の一回り以上年上のお兄ちゃんはシスコン。それもかなりの。そりゃ私だって負けず劣らずなブラコンっぷりだよ!お兄ちゃんが一番カッコイイと思うし世界一優しいと思うし一番強くて頼もしくて、『お兄ちゃん自慢選手権』なんてあったら、ぶっちぎりで優勝できる自信がある。
だけどお兄ちゃんのシスコンレベルは、私なんかの比じゃない。下忍の班編成の時だって泣く泣く私を紅先生の班に入れたって火影様に教えてもらったし(ちなみに最初は私もシカマルと一緒の第十班に入れてもらえるはずだったのに、お兄ちゃんが「俺の可愛いをクマになんて任せられるかっ!」と大暴れしたらしい。バカ…)。

それは置いといて、私の肯定の言葉を聞くとシカマルは「やべっ!!」と言いながらいきなり立ち上がる。

「どしたの、いきなり!びっくりするじゃん!」
「それ、早く言えっての!カカシさんが帰ってくる日なんかに、俺がお前の部屋にいてみろ!あの人絶対キレるだろ!」
「そうだよ、今日こそ仲良しになってよー」
「!!バカかおまえっ!俺じゃなくていつもカカシさんが……」

そこまでいうと、私の体は突然暖かなぬくもりに包まれていた。

「ただーいま、
「!!!(ゲッ!)」「お兄ちゃんっ!」

後ろからぎゅっと持ち上げられて抱きつかれて、猫よろしくすりすりすり寄ってくるお兄ちゃん。決して高い方ではない私の体は浮いてしまって、足は宙をブラブラ彷徨っている。散々シスコンとかバカとか言ってもやっぱり大好きなお兄ちゃん…私も当然嬉しくて笑顔になる。
抱きしめられる力が少しだけ弱くなったから、その瞬間に地に足を着き、体を動かして向かい合う。そしてしっかり私からも顔が見えるように見上げて、笑顔いっぱいでいつもの言葉を捧げるんだ。

「おかえり、お兄ちゃん!!!」

そうするといつも、お兄ちゃんの片方しか見えない綺麗な目がすんごく優しい三日月形をする。私はお兄ちゃんの、この安心しきった優しい顔がすごくすごく好き。

「ただいま、……!!!!」

お兄ちゃんが両手を広げ再びぎゅっとしようとした瞬間、突然腰に回された腕によって私の体は間逆に引っ張られ…気がついたら体のすべてが、ふんわりと違うぬくもりに包まれていていた。

「おかえりなさい、カカシさん」
「………」

私の頭上でひきつる笑顔でお兄ちゃんに話しかけるシカマルと、両手を広げたままジッ…とシカマルを睨んでるお兄ちゃん。シカマルの私を抱きしめる力がぎゅっと強くなる。その様子を見たお兄ちゃんは両手を組み、わざとらしくため息なんてつきながらシカマルに話しかけた。

「……何でお前がの部屋にいるわけ?さっさと家に帰ってシカクさんの手伝いでもしてちょーダイ」
「別に手伝うコトなんかないっスよ。そんな日に自分の『彼女』の部屋にいたいと思うのは、当たり前のことじゃないんスか?」
「!!何度も言うがお前はこいつのただの『幼馴染み』。『彼氏』だなんて認めてない」
「残念なんスけど、カカシさんが認めてなくても、はガキの頃からとっくに俺のもんって決まってるんで」

諦めてください、何て言うとシカマルはさらにぎゅっと抱きしめる力を込める。そして私の頭を軽く寄せて、そこに小さくキスをした。シカマルの普段は言わないセリフとその行動に顔は真っ赤だし、心臓はもうきゅんきゅん。幸せすぎて死にそう……
そんな嬉し恥ずかし、でもすんごく幸せぇ〜な気分でふわふわだったのに、はっと気付いたら私以外の空気はピリピリ、殺気はバンバン。シカマルは優しく私の頭を撫で続けてるくせに、ふと下をみたら今にも影がお兄ちゃんを捕まえようとウネウネ蠢いてるし お兄ちゃんなんて周りに黒いオーラが今にも見えてきそうな程に怒ってるし、正直……あの綺麗な赤いおめめを今にも拝めてしまいそうな勢いだ。

待て待て、きゅんなんてしてる場合じゃないっ!!
この事態を飲み込みシカマルの腕の中で一人もがいていると、お兄ちゃんは私が子供の頃から大好きな三日月型の目を作ってにっこり笑いかけて来た。その身にはブラックなオーラを纏っているのが見て取れた。

、安心してちょーダイ」
「…へ?」
「お兄ちゃんが今すぐこの悪夢から目を覚めさせてあげるネ」
「…え゙?」
、ちょっと離れてろ」
「…ちょ…シカマル??」


この空気、この流れ、この感じ…ちょっとちょっともしかして…もしかしなくても…まさか……

「万華鏡写輪眼!!」
「影首縛りの術!!」
「バカァァーー!!」

神様、私の願いは一つだけです…どうか大好きなお兄ちゃんと大好きな彼氏が『この世で』仲良くなりますように。。。