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「今日はお友達記念日だね!」

 夕飯についてシカと言い合いながら歩いていると、が後ろからぐしゃぐしゃっと頭を撫でながら言ってきた。驚いて二人で勢いよくその腕の方向を見ると、彼女は綺麗な笑顔を浮かべいて、横を見ればシカも笑っている。だからオレも無意識に笑っていた。
 この笑顔をずっと囲まれていたい…そんなことを生まれて初めて考えた。

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 楽しい帰り道を過ごし、夕飯の時間。
 テーブルの上には伸びきったラーメンと、ぐっちゃぐちゃな鯖の味噌煮が並んでいる。「何食べたい」と聞かれ素直に食べたいものを答えたからと言って、正直今の彼女には綺麗で美味しそうなものが作れるわけではない。そこは期待していなかった。
 けれど、これだけは言いたい。何故、その料理技術で二つのものを同時に作った。せめて一つだけに注力すれば、まだもう少しマシなものが出来ていたであろう。そして言った本人が言うのもなんだが、ラーメンなら餃子、鯖なら白米が欲しい。両方一度に食べたかったわけではない…どちらかで良かったんだ。オレもシカマルも、カオスと化している食卓の前で固まっていた。

「…オレ、この後すぐ任務だからやっぱ食わずに行…」
「シカマルくんも食べるよね?」
「…ハイ」

 蒼い顔を浮かばせ食事を拒否しようとしたシカマルを強制的に食わそうとする声が響き、くくくっと笑みが漏れる。の料理は食べた者にしかわからない、一種の忍術のように思っている。最初の頃よりもだいぶマシにはなった。見た目が悪いだけで、食べようと思えば食べられるレベルにまで成長した。たまに「?!」という味もあったりするが…。

 ご愁傷さん、とシカマルに術で話しかけると「これから任務だぞ、どうにかしてくれ」と心の底から助けを求める声が脳内に響き渡った。そんなオレらのやりとりがあるとは露知らず、はにこにこ笑って「召し上がれ!」なんて言いながら箸を椀をシカマルに渡している。
 にっこにこ顔のと半分死んでる顔のシカマル―…この対比がさらに笑えて、オレはとうとう声に出して笑い始めた。そんな俺の様子に不思議そうな表情を浮かべ小首を傾げる彼女と、心底困った顔の相棒の顔。二人の対照的な表情が、オレをさらに笑いの世界へと誘う。

 ナルト姿でこんなに笑えるなんて、どれくらい振りだろうか。
 の前で、この姿で感情を出せるなんて想像できていただろうか。
 出したところで受け入れられるなんて、思えていただろうか。

 ー…嬉しい、楽しい。

 ずっとこの優しい時間が続いて欲しいと、柄にもなく思った。

 この願いは叶わぬものだと、今までの経験から知っている。いずれは受け入れがたい現実も来るだろう。
 …けれど、これだけははっきりと言える。

 オレが今生まれて初めて強く感じているもの、それは紛れもない…


 クチナシ −幸福ー