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あなたを思うこの気持ちは、あなたと会ったり話したり
手を握ったりギュッと抱き締め合ったりするだけで
ありえないくらいに、信じられないくらいにどんどん膨らむ。

「もうこれ以上無理っ!」ってくらいに大きく膨らんだら
私のこの気持ちは何になるのかな?

愛しい気持ち


例えば一人でゆっくり歩くいつもの帰り道。何か考えていようといまいとも、てくてく歩いたらいつもと同じ場所に着く。でもシカマルを「大好き」って気持ちの先は、必ず一緒の場所には辿り着かないの。

「ねー、何でだと思う?」
「…お前、それ、オレに聞く?」
「だって里一番の天才なんでしょ、シカちゃんは」
「シカちゃんいうな、バカ

はぁ、とついたため息は真っ白で、シカマルはこれからもっと寒くなるであろう冬空を見上げた。それにつられても首をくいっと持ち上げる。そこにはこの時期特有の漆黒のカーテンに瞬く、沢山の星たちが光輝いていた。

「ぅわっ、ちょ、シカ!見て見て見てっ!すっごい綺麗ー!」
「おー、ほんとだ。すげーな」
「ねねっ、あれ何座?!『かしおぺや』座?!」
「揺らすなバカッ!ってかあれ『オリオン座』だから」
「ほー」
「ちなみに『カシオペヤ』じゃなくて『カシオペア』な」
「へぇ、あれがオリオン座かぁ」

シカマルの話を聞いているのかいないのか、ニコニコしながら上を見ながら歩く。首ごと上を向きながら歩くもんだから、体はあっちへふらふらこっちへふらふら。その姿が可愛らしくも何だか危なっかしくて、シカマルは苦笑いを浮かべるとそっと指を絡ませた。その瞬間、ビクッとの体が小さく揺れた。

?」
「…ほら、違う」
「は?」

突然発された「違う」発言に、意味も分からず自分の横を見下ろすシカマル。首を真上から正面に戻していたは何かを我慢しているような表情をしていて、我慢するあまりアヒルのように口を尖らせていた。

「何が?」
「あのね、今シカマルがギュッて手を握ってくれた時、すっっごい幸せな気持ちになったの」

我慢しきれなくなったのか、ふにゃっと笑いながらシカマルを見つめる。そしてきゅっ、と弱くその手を握り返した。突然の告白に「そっか…」と平然を装うも、あまりの可愛らしさに口元に手を置き何とか顔を隠すシカマル。そんな様子に全く気付かないは、言葉を続けた。

「でね、今私のシカマルが『大好きだぁー!』って気持ちがね、これでもかー!ってくらい溢れるの。もうね、満杯なの!」

そういって微笑みながら、少しだけ繋いでいた手を引きシカマルの顔を覗きこむ。その瞬間天使のような頬笑みは、少しだけ意地悪そうなそれになった。

「可愛いーシカマル、顔真っ赤!」

自然と顔が赤くなっていたシカマルは、照れ隠しに繋いでいない方の手で彼女の赤くなった鼻を弾いた。大好きな彼女からあんな大告白されて、照れない人がいるなら会いたいもんだ…。鼻を攻撃されたことによりふぎゃっ、と変な声をだしたは、空いている手で鼻を擦りながら言った。

「…でもね、しばらくすると変わっちゃうの」
「どういう風に?」

ゆっくりと歩いていた歩みを止める二人。シカマルはを、はシカマルを真っ直ぐと見つめる。

「ついさっき満杯になったはずの私の気持ちがね、今シカマルが私に触れたことでもっともっと一杯になるの」
「…」
「なんていうか、大好きがもっともっともーっと、大きくなるの。大好きじゃ伝えきれないくらい!!」
「!!!」
「ねー、これって何だと思う?シカマルなら分かる?」

二人はじっと見つめ合っていたが、ぱっとシカマルが視線を下げた。そして握りしめていた手にきゅっと力が籠る。25時の空は静かで真っ暗で、二人以外誰もいない。

「……か……よ」
「え?…ぅわっ!!?」

小さな声で何か言葉を発したかと思ったと同時に、シカマルは突然グッとすごい力で引き寄せた。

「いきなりどうし…」
「オレにもわかるよ、その気持ち」

すっぽりと自分の胸に収まったをぎゅっと抱きしめ、言葉を紡ぐシカマル。冷え切っていた体はお互いの体温を分け合うように混ざり合う。はくいっと首を上げると、すぐ上にあるシカマルの顔を見つめる。

「ほんと?この気持ちは何?何ていうも…っっんっ!!!!」

言葉の途中で額に落ちて来たのは、先ほど同意をくれた優しい唇で。シカマルはそっと頬に手を当てると、瞼や鼻、頬にゆっくりとキスを落としていく。最後に優しく唇を重ねると、切ない表情を浮かべてを見つめる。

「シカマル…?」
「オレもお前と同じだよ。一昨日よりも昨日よりも、のことがすげー大事になってる」
「…」
「この気持ち、何て言うか教えてやろうか?」

ゆっくりと大きく頷くの体を、再びぎゅっと抱きしめるシカマル。自分よりも小さな体は柔らかくて、力を込めたら壊れてしまいそうだ。甘い香りが広がって、の真っ白な首筋に数個の赤い花を散らす。その度に小さく震える彼女の体に微笑むと、耳元で囁いた。



《《愛してる》》