
一晩に三つの任務を三日連続で片付けた最終日、じぃちゃんが一日休暇をくれた。予期せぬ休暇。嬉しくないわけがない。オレは一度帰宅して手早くシャワーを浴び、輝きだした太陽と共に、の元へと駆けだした。
ドアもすべて無視して、瞬身の術で勝手にの家のリビングへと上がり込む。突然現れて驚かせるつもりだったのに、この家の主であるはそこにはなかった。
後から怒られるのも面倒なので、とりあえずそこで履物を脱ぐ。以前同じようにリビングに現れたら大目玉を喰らったのだ。あの鬼のような形相を思い出し軽く身震いをすると、頭を振るって気を取り直す。決して広くはない家全体をを見回すが、お目当ての姿は見当たらない。
―…任務か…?
残念に思いつつ、最後の願いを込めて寝室の扉を開ける。するとそこには柔らかい日差しの中、安心しきったように白い海に埋もれるの姿があった。求めていた姿を見つけて小さく微笑むと、静かにベッドに腰掛ける。そして起こさないようにそっと腕を伸ばし、額に触れている色素の薄い髪を梳いた。それによって遮るもののなくなったの顔はどこか幼くどこか儚げで、無意識のうちに笑みがこぼれる。
休みの日も早起きな彼女。泊まった日は彼女より早く起きようと努力はしてみるものの、の柔らかな声に起こされる喜びを知っているため、いつも気持ちだけで終わっている。だから彼女の寝顔を見るのは本当に久しぶりで、目の前で気持ちよさそうに眠る彼女の顔を眺めつつ、ゆっくりと頭を撫でた。すると眠っているはずの彼女の口元がゆっくりと持ち上がり、オレの腕にすり寄ってきた。
――寝てても笑うんだな、こいつは。
何度この笑顔に助けられ、ヤキモチを焼き、そして愛おしいと思っただろう。どうやったら自分だけにその笑顔が向けられるのか、真剣に考えたことを彼女は知っているだろうか。思いが通じ合ってからも、を思う気持ちは膨らむばかりで、自分でも手に負えないほどになっている。
そんなオレの思いも露知らず、目の前のこいつは気持ちよく眠り続けてる。その姿が綺麗で、他の誰にも見せたくなくて…柔らかな髪を撫でていた手を止め、の華奢で綺麗な体を組み敷いた。
―…、好きだ…。
そう静かに呟くと、額に頬に目尻に鼻に、そして柔らかな唇に小さく口づけを落とす。そして最後にきゅっと抱きしめ全身で彼女を感じると、オレも誘われるように眠りについた。
願わくば、大好きな彼女と一緒の夢が見られますように―…。