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「ねー、どう思う?」

さっきから繰り返される、同じような質問。

「さぁ…どっちでもいいんじゃね?」

これもさっきから返している適当な答え。
どうやったら目の前の彼女は俺ら二人の未来を考えてくれっかなー…。

ストック 【見つめる未来】


 忍ではないとは、毎朝通る小さな洋館の前で知り合った。毎朝門から扉までに咲いている色とりどりの花々に嬉しそうに水をやる姿に、恋だ愛だと興味なかった俺が一瞬で落ちた。そして出会って数週間で想いを伝えた。
 それから早五年。今でもコイツは、あの洋館で一生懸命仕事をしている。その仕事とは……

「ねーねーシカマル、やっぱりナルトは紋付袴がいいかなぁ?でもさっ、あの綺麗な金色の髪と青い瞳にはシルバーのタキシードも絶対似合うと思うの!それもカッコイイと思わない?!」

 そう、の仕事はウェディングプランナー。洋館の裏には小さな神殿とチャペルの両方があり、さらに披露宴ではその洋館をまるごと使ってしまう式場兼ゲストハウスを営む、バリバリのキャリアウーマンだ。一日一件のみ取り扱う式場であり、その特別感との人柄の良さから、予約は数年先までいっぱいな状況であった。
 そんな、今は数ヵ月先に迫ったナルトとヒナタの結婚式をプランニングしている。だか二人の場合互いを深く知る親しい友人であるため、さすがのもなかなか「これが一番いい!」と即決出来ないようなのだ。

 だが、折角二人とも休みで、の部屋でまったりしているというのに、さっきから他人の話や今まで思い付いたプランの話ばかり…正直つまらない。こいつが仕事に一生懸命なのはわかる。この仕事が大好きだってのも知ってる。部屋に無造作に散らばる数々の資料と結婚専門雑誌が、彼女の仕事に対する姿勢を示していると感じる。
 だけどそこに少しでも俺を感じることが出来なくて…同じ空間にいるたった今でさえ、俺の存在なんかまるで見えてない気がした。その状況が心の底からつまらない。幼いって言われたらそれまでだが。

「ねっ、神殿式とチャペル式、二人にはどっちがいいと思う?」
「…別にどっちでもいいんじゃね?」
「ひどっ!二人の長年の友人であるシカマルの意見も聞きたかったのに!」

 男の人って何でそうかねー、ナルトもこないだサロンでさ…と話を勝手に進める。そんな話より違う話しよーぜ。俺としてはあいつらの結婚よりも、折角のお前との時間を一緒に楽しみたいんだ。
 そうは思っていてもなかなか口には出せず、ただ話を適当に返すしかない自分がなんともふがいない。

「んじゃさ、男性としての意見ちょうだいよ!」
「男性として…?」
「そっ!男の人にとっても結婚式は大事でしょ?シカマルだったらチャペル式と神殿式、どっちがいい?」

 目の前に座るは、少女のように目をキラキラ輝かせながら俺を見てくる。彼女もプランナーである前に女性だ。こういう話は仕事だけでなく私事(シゴト)でも好きなんだろう。そんなキラキラ顔の彼女を頬づえつきつつじっと見つめていると、ふと小首を傾げて名前を呼ばれた。

「…シカマ…」
「神殿」
「…へ?」
「神殿式がいい」

 突然声を出した俺にあっけにとられているのか、一瞬戸惑った雰囲気がした。しかしそれが質問の答えであるとわかると、嬉しそうに笑いながら目の前の資料にペンを走らせる。

「神殿式ねっ!ってことは羽織袴かぁ〜…シカマルっぽいっ!でも何で?やっぱ奈良家は和風なお家柄だから?」
「…から」
「え?」

 嬉々として聞き返してくる彼女。俺は肩肘ついてじっとを見つめつつ、ニヤリとした笑みを浮かべて言った。

「お前には白無垢が似合うと思うから」
「!?」

 顔だけでなく首までも真っ赤にしている。その顔を見て俺はにんまりする。してやったり。どうだ、参ったか。今は俺しか見れねーだろ、バーカ。

 さぁ、そろそろ俺らの未来(さき)も考えようぜ、―…。